引き分け再試合、両エース胸のうちは
2006年8月20日(日) 22時0分
5万人の観衆が、まだ日差しの強いスタンドを埋めつくしたままだった。延長15回2死、駒大苫小牧の遊撃手、三木が、早稲田実の後藤が打ち上げた飛球をつかんだ。37年ぶりの決勝引き分け再試合が決まった。ねぎらいと驚嘆。多くの観客が思わず席から立ち上がった。耳をつんざく拍手が整列する選手を包んだ。
3回途中から救援した駒大苫小牧の田中は「雑にならないよう、辛抱強く投げました」と淡々と話す。1人で投げ抜いた早稲田実の斎藤も「球を低めに集めることだけを心がけました」と穏やかな表情で顧みた。
投げ合いになった。8回、駒大苫小牧が三木の本塁打で均衡を破ると、その裏に早稲田実も後藤の中犠飛で同点。そのまま延長戦に入った。猛暑の中、歯を食いしばって体を酷使しているのに、神経をさえ渡らせて崩れない両エース。試合を見る目は次第に2人に引きつけられていった。
延長11回。斎藤は1死満塁のピンチで、駒大苫小牧が仕掛けたスクイズを見抜いた。とっさにスライダーをバウンドさせてバントを外し、三塁走者をアウトにした。「(捕手の)白川がよく捕ってくれました」
田中は延長13回、三ゴロを打って一塁に頭から滑り込んでいる。「公式戦では初めて。塁に出たかった」。その裏にあわやサヨナラ負けの場面を迎えた。2死二塁で暴投し、走者を三塁に進めた。2人を四球で敬遠し、満塁策をとった。
「敬遠でボール球を続けて投げるときも気持ちを切らさないようにした」。最後は得意のスライダーを丁寧に配し、二ゴロ。くぐり抜けた。
もうあとはない。15回に臨む選手が大歓声を浴びた。斎藤は2死を取って迎えた駒大苫小牧の4番本間篤に対し、初球、直球を投げ込む。スコアボードは「147キロ」を表示した。球場内がどよめいた。さらに140キロ台の直球を4球続けて投げ込み、最後はフォークボールで空振り三振に。
田中はつり込まれそうな自分を抑えた。「自分も、と思ったら投球が崩れる。いらない感情は抑えた」。最後のマウンド。1死から1人歩かせたが、動じなかった。
「田中君はスライダーがよく、改めてすごい投手だと思った。対戦していて楽しかった」と、斎藤はいった。
投げ抜いた球数は、田中が165球、斎藤は178球。これが21日に報われるのかどうか。「3連覇がかかっているなんて最初から頭にない」と田中。斎藤は「今日で高校野球は終わりのはずでしたが」。
2人が続けた言葉は「もう1試合できるのはうれしい」だった。
(2006年08月20日21時46分 朝日新聞社より引用)
えーっと、うーんと、、、
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